ラベンダーとポプリの思い出

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ポールが裏庭のドアの脇に小さな塊で咲いているラベンダーを刈りながら、「これ捨てていいよね?」と聞いてきた。私は「取っておいて」と答えた。ラベンダーの花はどうしても貴重に思えて捨てられない。数年前に庭で大量に収穫して乾燥させたラベンダーが、使い道も無く、菓子箱一杯に残っているにも関わらず。

小学校高学年の時に、ポプリづくりの研究者、熊井明子先生が「すてきなポプリ」という本を出版された。その時ポプリというものを知らなかったけれど、当時人気のあべゆりこさんが描く表紙のイラストの可愛さに目を引かれたのだと思う。値段は500円。一か月のお小遣い以上もするなかなかの価格だったにも関わらず、本屋でその本を手にして、季節ごとのポプリが様々な透明な容器に入って飾られているさま、ポプリにまつわる興味深いお話し、材料となる多様な花やハーブなどを見て、すっかり引き込まれてしまった。

早速どれか作ってみようと、簡単そうなポプリに挑戦してみたけれど、10歳そこらの子供の財力では、一番身近な材料でできそうな柑橘系の果物を用いたポプリでさえ、クローブを用意できないなど、どのポプリに対しても、材料となる全ての花やハーブ、スパイスをそろえることができなかった。

それでも、近所の野原や公園、当時住んでいた公務員住宅の各世帯に与えられた小さな花壇から(良心が傷まない程度に少しばかり)、できる範囲で花を集め、乾燥させ、分量通りに混ぜ合わせ、瓶に詰め、飾るというポプリ作りの一つ一つの工程を楽しんでいた。欲しいと思ったものを、自分で作っているという高揚感があった。

その本の中で、どうしてもバラとラベンダーのポプリが作りたくなったが、どちらも高価な材料であった。バラの花びら1カップ、ラベンダー大匙3~4がメインになるポプリだった。バラの花は誰かの贈呈用に贈られたものを手に入れる機会があったが、ラベンダーはそもそも花屋で売っているものではないので、身近に入手できるものではなかった。

そこで、「すてきなポプリ」の巻末にポプリの材料を販売する「お店のリスト」があり、東京渋谷にある「生活の木」からカタログを請求することにした。今ならオンラインであっという間に注文できてしまうのだが、当時はハガキでお願いするものだった。「生活の木」からカタログが送られてきたときは世界が広がったようでとてもうれしかった。お小遣いから、ラベンダー1パックを購入した(100ℊか200ℊで500円だったような気がする)。そのラベンダーを大事に大事に使ってポプリを作った。

千葉の船橋のララポートにも「生活の木」があることがわかると、小学5年生であったと思うが、友達と一緒に電車やバスを乗り継いでその店を訪れた。これまたお小遣いを貯めて何とか捻出した1,000円程度のお金を握りしめ、壁一面に並ぶポプリの材料を見ながら、目当てのローズオイルの金額を差し引いた残りのお金で、どれを買おうか悩みながらもワクワクする時間を過ごした。

そんな思い出があるので、どうしても、あの頃、のどから手が出るほど欲しかったラベンダーやバラ、綺麗な色の花が手に入ると、とりあえず乾燥させて取り置きしたいという衝動に駆られる。その花々を、色よく混ぜ合わせてポプリをつくることで、子供時代の自分が満たされるのだと思う。

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