学生ローン、いつ早期返済するのが合理的?

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2024年8月18日のThe Times 「When it makes sense to pay back a student loan early」より抜粋・要約

学生ローン返済の仕組み

2023年9月から大学入学するイングランドの学生には以下のプラン5の学生ローンが適用される(1998年から2012年はプラン1、2012年から2023年はプラン2であるが、ここでは詳細を割愛)。

プラン5:

帳消しにされるまでの期間:40年

支払いが生じる閾値:£25,000

閾値を超えた給与に課せられる割合:9%

金利:RPI(小売物価指数)

2023年の卒業生(プラン2)の平均負債額は£44,490であった。プラン2の卒業生の金利はRPI+3%、閾値£27,295である。RPIは4.3%であったためプラン2に課せられる金利は7.3%となり、負債は1年で£3,281増加する。そしてこの負債額をカバーできる給与は£63,751となる。

全額ローンを支払える卒業生の割合は?

学生ローンの支払いは、負債額ではなく、給与額に基づく。一定額を超えた給与の何割かを支払うことになるため、教育コストは、ローンというより卒業税と認識されている。

基礎税率の納税者は、年間基礎控除額£12,570を超えた所得の£1に対し37p課税される(内訳は、所得税20p、国民保険8p、学生ローン9p)。 他のローンと違い、学生ローンはクレジット(信用)スコアに影響せず、返済できずとも債務不履行に陥ることはない。

2022年に入学したプラン2のフルタイムの大学生の内、27%のみが学生ローンを全額返済すると予想される。一方、23年入学のプラン5の学生では、その割合は35%になる。

早めの返済は合理的なのか?

資産管理会社Quilterは、まとまった金額を学生ローンの返済に充てるより、投資をした方が得であると述べる。

2023年9月に入学したプラン5の学生は、卒業時£43,700の負債を負うと想定されている。仮に初任給£30,000、毎年4%昇給、RPI3%とすると、40年間の返済額は£42,760となり、£72,350は帳消しにされる。

もし、この学生が卒業時に全額負債を返済する場合、£43,700の費用がかかることになる。しかし、同じ金額を投資する場合、40年後には£209,805に成長する可能性がある(年率4%成長を仮定)。

また、オーバーペイメント(過払い)も得策ではない。上記の例で、今度は卒業時に£10,000を返済した場合、残債が帳消しになるまで£52,760支払う計算になる。

以上のことから、典型的な給与では、長期的に見て、オーバーペイメントは割に合わない、負債額分を投資に回す方が、リタイアする時に資産が増えている可能性がある。

給与額のスイートスポットはどこか?

給与が£40,000である場合、平均負債額£43,700を返済するために、28年8ヵ月をかけて£70,202支払うことになる。しかし、£10,000を先に返済すると、その総額を£58,736に抑え、期間も22年9ヵ月に短縮することができる。つまり過剰な返済をすることで、£11,466得することになる。

しかし、この給与レベルであれば、£43,700を一括で返済するよりも、その金額を投資に回すほうが割割に合う。なぜなら、28年8ヵ月後には£134,515となる可能性があるからだ。

AJ Bell(投資プラットフォームを提供する会社)のLaura Suterは、卒業時に、給与額、金利、市場のパフォーマンスが分からないため、長期的に見て、どのやり方が自分にとって得になるか見極めることは難しい。結局は自分のプライオリティ次第である。何年間も借金がある状態に耐えられない人もいれば、家を買うために貯金を使うことを優先したい人もいる、と述べる。

給与額が高いほど、計算は簡単

高所得になると、ローン帳消しになる可能性は低くなるが、全額返済できない場合よりも利息負担を低く抑えられる。給与が高いほど返済額も多くなり、利息が生じる期間も短くなる。結果、より早くローンを完済することができるからだ

例として、初任給£50,000、負債総額£43,700の場合、18年1ヵ月で£58,344を支払って完済することになる。£100,000であれば、6年4ヵ月で£48,214。

超高所得者であれば、ローン全額返済は必至なので、最初に全額支払うことも検討する余地はある。しかし、全額返済できそうもないのであれば、高利回りの貯金口座に資金を預けるのは得策である。銀行の利子がローン金利を上回るかどうか試してみるのも良い。

現在のベストな5年固定金利はAI Rayan銀行の4.55%である。

プラン5で平均負債総額£43,700を返済する場合

 初任給返済期間 返済総額最初に£10,000 オーバーペイした場合の返済期間£10,000を含む返済総額 
£30k 40+£42,760 40+£52,760 
£40k  28.7£70,200 22.8£58,740
£50k  18.1£58,340 14.3£52,170 
£75k 10.4£51,410 8.1£48,220 
£100k  6.3£48,210 4.9£46,370 
£150k  3.8£46,380 3£45,300 
毎年4%の昇給、金利3%の想定 出所: Quilter

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